高度不妊治療(体外受精など)
自然妊娠において、受精した卵子(受精卵あるいは胚)は細胞分裂を繰り返しながら成長を続け、着床が可能な胚盤胞とよばれる段階まで発生を進めます。同時に、受精卵は受精した場所(卵管采)から子宮へと、着床するために緩やかに移動を行います。
一方、着床の成立には胚盤胞を受け入れる子宮側の準備を整えていく必要があります。この子宮側の準備に、胚が受精から胚盤胞までの成長過程に発する伝達物質(シグナル)が関与していることが分かっています。
当院が開発したSEET(Stimulation of Endometrium Embryo Transfer:子宮内膜刺激胚移植)法とは、体外受精においても自然妊娠と同様のシグナルを子宮に届けることで、より着床しやすい子宮内膜の状態を作り出し、妊娠率の向上を促進する技術になります。
すなわち、受精卵の成長過程に分泌されたエキスを体内に戻すことで、『受精卵が行くぞ』という胚由来のシグナルが子宮に届き、着床しやすい状態に促す方法がSEET法です。
現在、様々な病院で採用され、体外受精の成功率をあげている「シート法 (SEET)」は当院が開発し、国内およびアメリカ生殖医療学会に 論文発表したもので、医療特許を取得しています。(特許出願番号08-527756)。
体外受精により作出された受精卵を体外で5~6日間培養し、得られた胚盤胞は一旦凍結保存しておきます。この際に体外培養に使用された培養液を、胚盤胞とは別の容器に封入した後に凍結保存しておきます。この培養液の中に、受精卵が成長する過程に排出される伝達物質が含まれています。ここまでが、SEET法の治療準備となります。
移植する周期(凍結融解周期)において、まず予め凍結しておいた培養液を子宮の中に注入します。その2~3日後に、凍結しておいた胚盤胞を1個移植します。
日本産婦人科学会は、多胎を防ぐ観点から、原則1個の胚移植を推奨しています。
当院が開発したSEET法の最大のメリットは、移植に用いる胚盤胞を1個にすることで、多胎を防ぐと同時に、妊娠率を大幅に向上させることにあります。胚盤胞のみを移植するよりも妊娠率が大幅に向上するSEET法は、今では様々な世界中の施設にて用いられており、当院では標準的治療の一つとして取り入れています。
この表はSEET法の成績を他の移植方法と比較したものです。初回採卵で全胚凍結を行い、その後初めての胚盤胞移植における妊娠成績を示しています。(http://www.funin.tv/interview/index11.htmlより引用)
SEET法ではHCG陽性率が92%、臨床妊娠率が80%と高くなりました。この成績は当院にてアメリカ生殖医療学会に論文発表し、高い評価を頂きました。
2段階胚移植は、受精させてから2-3日目の胚(初期胚)と5-6日目の胚(胚盤胞)を、同一の移植周期において時期をずらして、2段階に分けて移植する方法になります。
1段階目の初期胚移植が、胚の伝達シグナルを子宮に届け、子宮をより着床しやすい状態へと促します。次に2段階目の胚盤胞移植で、着床しやすくなった子宮に胚を届ける方法となります。