卵管の異常は、女性側の原因の中では、最も多いものです。卵管にダメージを受けると、卵巣から飛び出す卵子をうまくキャッチできなくなったり、たとえキャッチできても、卵管の中を子宮までうまく卵子を運べなくなる結果、不妊症や子宮外妊娠となります。原因としては、卵管炎や卵管留水腫、子宮内膜症が重要です。卵巣チョコレート嚢胞も、子宮内膜症の一種です。
卵管異常の治療には、以下のものがあります
1. 卵管炎の治療
2. 子宮内膜症の治療
・偽閉経療法 ・偽妊娠療法
3. 卵巣チョコレート嚢胞の治療
・アルコール固定 ・腹腔鏡下手術 ・開腹手術
4. 卵管形成術による治療
・卵管鏡下手術 ・腹腔鏡下手術 ・開腹手術
ここから、卵管異常の治療について説明していきます。
性交渉などを通じて女性の膣や子宮内に侵入した病原微生物が、卵管の中や周囲に広がり、炎症を起こすと、柔らかくてもろい卵管は閉塞したり、繊毛を失ったりします。これが卵管炎です。
病原微生物としては、クラミジア、淋菌、大腸菌、ウレアプラズマ、マイコプラズマなどがあります。
原因となる病原微生物に応じて、抗生物質や抗菌剤の内服薬による治療が行われます。
卵管炎の後遺症として、卵管が細くなっている場合には、通水治療が有効である場合があります。
卵管が閉塞している場合や、卵管周囲の癒着が強く、卵管采が卵子を取り込みにくい場合には、体外受精による治療が有効です。
卵胞ホルモンを抑える治療は、閉経後の女性と同じように卵胞ホルモンが低下した状態にしますので、偽閉経療法と呼ばれます。
偽閉経療法には次の2通りの方法があります。
GnRHアゴニスト製剤(製品名/スプレキュア、ナサニール、リュープリン、ゾラデックスなど)は下垂体の働きを抑えます。その結果、卵巣機能を低下させ卵胞ホルモンの分泌を減らします。4~6ヶ月これらの治療を行うと、かなりの効果を期待できます。しかし副作用も軽くありません。副作用の第一は、更年期の症状です。のぼせ、肩こり、発汗、頭痛、うつ症状などがみられ、治療の中断を強いられることもしばしばです。
また、卵胞ホルモンの減少は骨をやせさせる原因となります。長期にわたって使用すると骨量の低下がひどくなり骨粗鬆症になる可能性があるので注意が必要です。副作用を和らげる方法には、アドバック治療とドローバック治療があります。
ダナゾール製剤(製品名/ダナゾール、ボンゾール、ダナンなど)は、エチステロン誘導体といい、下垂体の働きを抑える作用を持ちます。この薬を4~6ヶ月位、連続服用することで効果を期待できます。
副作用として、肝機能障害、体重増加、にきびなどがあげられます。服用中は定期的に採血して肝機能障害をチェックします。
妊娠中のようなホルモン状態を作ることを、偽妊娠療法といいます。
月経開始の2~5日後からピル(経口避妊薬)を連日服用します。
月経困難症は随分と緩和されますが、子宮内膜症そのものを改善する効果は不確実です。
しかし、副作用は比較的軽いという利点があります。
子宮内膜症が卵巣にでき、出血が起こり嚢胞を形成し、中に古い血液がたまった状態です。
ホルモン治療だけではなかなか改善しません。
チョコレート嚢胞の内容液を吸引し、嚢胞内を生理的食塩水で洗浄し、中にアルコールを注入して子宮内膜組織を退縮させる方法です。経膣的超音波か腹腔鏡で観察しながら行います。
身体的負担がほとんどないこと、手術後の癒着の心配がないこと、卵巣を削らないことなどのメリットがあげられます。
手術によってできる癒着をへらすことはできませんが、卵巣を削ってしまうため、卵巣機能の低下を招くことがあります。
開腹手術を行うと、逆に腹腔内が傷ついて、癒着が広範囲になることもあります。卵巣そのものを削るため卵巣機能の低下を招くことがあります。
卵管炎などにより、卵管が閉塞して卵子が通過できない場合や、卵管留水腫などにより、卵管の先が閉塞して卵管采が卵子を取り込めない場合には、体外受精による治療の他に、卵管形成術による治療があります。
内視鏡を内蔵した細いカテーテルを膣から挿入し、卵管の入り口まで進めます。カテーテルの先からバルーンを膨らませて卵管の中へ進め、閉塞している卵管を広げます。日帰りが可能です。
卵管の閉塞している部分のみを切除し、切り口の端と端を縫合して卵管をつなげます。
閉じている卵管の先端を切除し、外側にめくるように縫合し、人工的に卵管采を作ります。