名前はきいたことがあるけれど、詳しいことはよく知らない。きっとそんな人がまだまだ、たくさんいらっしゃることでしょう。
女性にとって望まない妊娠は、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。そのため、妊娠、出産を女性自身でコントロールすることは、女性の体を守るためにも大切なことです。女性が自らの意志で行える避妊法として、日本でも低容量ピルが普及してきました。また、ピルを服用すると生理痛が無くなる、生理前の不愉快な症状が楽になる、お肌の調子が良くなる、などなどの効果が期待できます。最近では、避妊を目的として内服する方のみならず、このような効果を期待して内服している方が増えています。
ここでは、ピルについて知っていただきたい知識をご紹介します。
ピルは毎日一錠ずつのむ避妊のための薬です。成分として、女性ホルモンである卵胞ホルモン(E)と黄体ホルモン(P)が含まれています。
ピル(経口避妊薬)は正しく服用すれば、100%に近い避妊効果が期待でき、女性が自らの手で完全にコントロールできる避妊法です。また、ピルを内服すると、月経困難症が改善、月経前の不愉快な症状が改善、ニキビが治るなどの効果があります。
ピルは、以下の3つの働きにより、効果を発揮します。
ピルに含まれている卵胞ホルモン(E)と黄体ホルモン(P)の2つの女性ホルモンが視床下部に作用して、卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制します。これにより、排卵がおこらなくなるのです。また、ピルには子宮内膜を変化させて受精卵が着床しにくい状態にしたり、子宮頸管粘液を変化させて精子の子宮への侵入を妨げたりするなどの避妊効果を高める働きがあります。
ピルには、21日間のんで7日間休薬するタイプと28日間のみ続けるタイプ(7日間はホルモンを含まない錠剤)があります。どちらのタイプでも効果に差はありません。服用者の好みとなります。
常に同じ量のホルモンが含まれる一相性ピルと、女性のホルモン変化に合わせてホルモンの量を変えている段階型ピルがありますが、避妊効果はどれも同じです。
一相性:マーベロン
段階型ピル:アンジュ、トライディオール、トリキュラー、シンフェーズなど
飲み方は簡単です。シートに書いてある順番に従って、毎日一錠ずつ同じ時間帯に飲むだけです。
シートに入っている錠剤を全部飲んだ後、次の日から新しいシートの錠剤を同じように飲みます。お休みはありません。
シートに入っている錠剤を全部飲んだ後、7日間錠剤を飲まない期間(休薬期間)をとり、その後新しいシートの錠剤を同じように飲みます。
低容量ピルは避妊効果が認められるギリギリまでホルモンの量を抑えているため、飲み忘れると効果が低下します。
例:いつも飲む時間をPM9:00とした場合
(A)飲み忘れてから24時間未満の場合
気付いた時に飲み忘れた一錠を飲む。その後は通常通り、PM9:00に飲む。
(B)飲み忘れてからちょうど24時間後の場合
飲み忘れた前日分のピル一錠と本来飲む予定のピル一錠の合計二錠を飲む。その後は通常通り、PM9:00に飲む。
(C)飲み忘れてから24時間を超えた場合
服用を中止して、次の月経から新しいシートで再び服用を開始する。中止している間は、他の避妊法を使用する。
(ただし、生理の周期を乱したくない場合は、他の避妊法を併用しながらそのまま予定通りのみ終える。)
ピルの主な副作用は、吐き気、嘔吐、乳房痛、頭痛、不正出血などの軽いもので、ほとんどの人は飲み続けていくうちに治まります。
ピルの重い副作用としては血栓症が知られていますが、低容量ピルでは様々な工夫によりホルモン量をできる限り少なくしているので、血栓症の起こる可能性はとても低くなっています。
ピルを飲んでいると避妊効果以外の好ましい作用、つまり副効用があります。低容量ピルのメリットとデメリットのバランスは、飲む人の年齢や健康状態、ライフスタイルなどにより異なります。一般的にタバコを吸わず避妊を希望する健康な人であれば、メリットがデメリットを上回ると言われています。
副作用(デメリット)
副効用(メリット)
ピルを飲んでいると乳がんや子宮頸がん(子宮の入り口にできるがん)になる確率がわずかに増加すると言われています。しかし、定期的に検査をうけていれば、血栓症やがんの早期発見は可能です。また、卵巣がんや子宮体がんになる確率は減少すると言われています。
病気や身体の状態によって、ピルを飲んではいけない場合や、注意して飲まなければならない場合があります。以下のチェック項目に一つでも該当する項目のある人は、まず、医師にご相談下さい。
STD とは主にSEXによって感染する病気のことで、エイズをはじめ梅毒、淋病、クラミジア感染症、性器ヘルペス、膣トリコモナス症、B型肝炎などがあります。ピルはSTDを予防するものではありません。これらの感染防止には、コンドームの使用が有効です。ピルをのんでいる間も、STDの予防のためには必要に応じコンドームを使用してください。
STDの検査は他の検査などと同時に行うことができるので、とくに特別な手間や時間はかかりません。STDは早期発見・早期治療が重要ですので、積極的に検査を受けるようにしましょう。
A1: ピルを飲むと太るのではないかと心配されている人がいるかもしれませんが、食生活の変化や運動不足など他の原因で太ったのを「ピルの副作用」と結びつけている可能性もあります。特に、新しい低容量ピルではホルモンの量や種類に改善が見られ、ピルの服用が原因で太るという説は統計の上でも立証されていません。
A2:ピルの内服を続けると男性ホルモンの働きが抑えられ、その結果ニキビが改善します。ニキビや吹き出物で困っている方にはお勧めしたい治療法となります。
A3:.ピルの内服を続けると排卵が起こらなくなり、結果的に生理痛(月経困難症)は改善します。ピルは月経困難症の治療にも幅広く用いられています。
A4:ピルは排卵を抑制することによって子宮内膜症の改善効果があります。初期の子宮内膜症の治療としてピルはよく用いられています。
A5:月経前になると、頭痛、吐き気、イライラなど様々な不愉快な症状が起こる事がありお悩みの方があります。月経前緊張症と呼ばれます。ピルの内服によってこれらの症状は随分と軽くなります。QOL(生活の質)を高めるためにはピルの内服は良い方法と言えます。